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宇宙医学、テレメディカルエコロジー(遠隔医療生態学)、テレメディスン(遠隔医療):協力と共同開発の展望

宇宙医学、テレメディカルエコロジー(遠隔医療生態学)、テレメディスン(遠隔医療):協力と共同開発の展望

O.I. Orlov1, V.I. Pougatchev2, R.M. Baevsky1, A.G. Chernikova1
1 State scientific center – Institute for biomedical problems, Russian
Academy of science, olegtm@bk.ru
76A Chroshevskoye sh., 123007, Moscow, Russia
2 Biocom Technologies, vpougatchev@biocomtech.com
20270 Front Street NE, Suite 203, Poulsbo, USA

要旨

宇宙有人探査ミッションにおいても、インターネットテクノロジーとテレメディスンシステム開発の為の協力においても、我々が目指すテクノロジーの進歩は、人間の健康維持と改善、そして究極において「生活の質の維持と改善」の為であるという、医学的研究と実践の本来の目的を見失ってはならない。

「Mars-500(火星有人探査プロジェクト)」における「環境が健康に与える長期的影響」の調査の為の数年間の共同作業(2008-2011年)で、個人のプリノソロジカルコントロール(病前管理)による疾病予防とテレメディスン・システムの問題解決の為の新しいシステムを開発する事ができた。本稿は、そのシステムの基本的背景について要点をまとめたものである。

序論

これまでの宇宙における医学的および生理学的調査の経験から、将来の宇宙医学における大きなチャレンジは、地上と同様に、予防、個別化、テレケア(遠隔治療)[1]である事が明らかになった。プリノソロジカルな診断方法をベースに宇宙乗組員の健康評価と健康リスク予測を遠隔で行う方法は、宇宙医学ではこれまで長い間行われてきた。

宇宙医学におけるこれまでの経験では、宇宙飛行士個々人の健康評価と適応特性評価をする上で、個人に属する諸条件の違いの為に(年齢、性、類型学的要素、等)、医学的観察およびテスト結果をどのように解釈し、観察された変化が健康維持の観点からどの程度の重要性を持っているかを結論付ける事を難しくしていた。

予防的適応すなわち健康障害の早期発見が、現在のテレメディスン開発における趨勢になっている[2]。にもかかわらず、テレメディスンの対象となる患者は種々の疾病を抱えており、健常人を対象にしたテレメディスン研究ができていないのが現実である。つまり、これまでのテレメディスンの研究は、既往症の診断と発見にフォーカスされていた。

Mars-500プロジェクトでは、健常人の大規模な医学的情報が人工衛星を使ったインターネット経由で世界中からモスクワに送られてきた。健康に影響を与える環境要因に関する情報収集がこのように遠隔で可能になった事から、新しい科学的、実践的なテレメディカルエコロジー(遠隔医療生態学)がスタートした[3]。本プロジェクトのサテライト調査では、健康状態モニタリングに加えて、データ収集と送信についてこれまでと異なる方法がテストされた。

背景

プリノソロジカル診断学

宇宙空間における宇宙飛行士の機能状態および健康と疾病の境界判断、つまり疾病予防の為の健康評価診断をする上で、プリノソロジカル原理の適用に成功した。疾病予防の為にプリノソロジカル原理を地上医学で適用するのは、対象が疾病を持つ患者であれ健常人であれ、その目的は宇宙医学の場合と全く同じである。

プリノソロジカル状態は疾病に先立って起こる可能性もあれば、回復に先立って起こる可能性もある(図1)。プリノソロジカル状態は、健常人において環境変化もしくは肉体的精神的負荷増加に対する適応に関係して生じる。

これまでの研究によると[4]、不適応によるプリノソロジカル状態および病前機能状態の発現は、生態学的および社会的要素、年齢、そして肉体的、感情的、精神的負荷の変化、天候の変化および健康状態悪化の自覚症状に大きく関係している。

プリノソロジカル診断学、健康→疾病の境界線上の早期発見
図1.プリノソロジカル診断学、健康→疾病の境界線上の早期発見

健康状態悪化の軌跡:健康→プリノソロジカル状態(疾病前状態、未病状態)→ノソロジカル状態(疾病初期状態)→ポストノソロジカル状態(疾病後期状態)

適応リスク

宇宙医学に適用されたプリノソロジカル診断基準は、更に心拍変動解析結果から適応リスクの確率的評価を行う「適応リスク」[5]の概念に発展していった。適応リスクは、一連の症状(症状と症状群)から疾病の臨床的診断を下すに十分か(十分でないか)の判断を下す臨床的リスクの概念と異なり、適応能力のリザーブ(余力=健康リザーブ)として特徴づけられる。

この新しいアプローチは、長期宇宙飛行中[5]および「Mars-500」のプロジェクト[4]の両方でテストされた。安静状態での心拍変動評価を基礎にした機能状態の分類から、安静状態での機能評価のみならず、通常は機能テストの結果評価される機能的リザーブの評価も行える。

プリノソロジカル診断の新しい概念による適応リスクは、生理学および医学の様々な分野において疾病症状に基づく臨床的判断では患者としての対象にはなっていない場合でも、本人には適していないか、通常ではない労働環境で働く人たちの健康評価と将来の健康状態予測評価をする上で、有効的に適用する事ができる。

個人的プリノソロジカル管理

「Mars-500」のサテライトプロジェクトにおける医学的、環境的研究の中で、長期間の健康状態変化を評価する為の方法が幾つかテストされた:ロシアとヨーロッパの幾つかの国(チェコ、ドイツ、ベラルーシ)ではグループを対象に月毎の調査を、そして米国とカナダでは週毎の調査を、それぞれの家庭における日常生活の中で行った[6]。テストデータ送付は通常Eメールで、米国とカナダの場合はクラウドをベースにしたクライアントサーバーテクノロジーを使って行った。

結果は、毎月の調査を行った地域では発見できなかった、あらゆる健康障害発現に先立つ自律神経バランス障害が、毎週行った個々人のプリノソロジカル評価から発見できる事が証明された。個々人のプリノソロジカル評価結果を、該当する被験者の「ライフスタイルと環境の影響に関する質問」に対する答えと比較評価すると、健康維持の為に改善しなければならないと考えているライフスタイル、生活・生活負荷、栄養バランス等のライフスタイルや生活環境から受ける精神的影響が、健康状態の変化に大きなインパクトを与えている事が明であった。

結論

この経験を基に、予防医学すなわち個人的プリノソロジカル管理の為の新しいテレメディスンシステムの開発に取り組んだ。このシステムの理論的、方法論的背景は、プリノソロジカル診断であり、安静状態における心拍変動解析結果から導かれるプリノソロジカル診断であり、適応リスク評価である。
このように宇宙医学における科学的リサーチにおいて、テレメディスンとテレメディカルエコロジーの各分野の専門家の協力が非常に有効である事が立証された。このような共同作業を継続する事が、我々が直面する「人間の健康を如何に維持していくか」という問題解決の可能性を広げていく事は間違いない。

References

[1] Gerzer R. Linking Earth and Space medicine: unique opportunities during simulations of interplanetary missions. International symposium on the results of the experiments, simulating manned mission to Mars (Mars-500). April 23-25, 2012. Moscow. Abstract book, 88-9.
[2] O.I. Orlov, “Telemedicine in management of medical care”, Slovo, Moscow, Russia, 2002, 39p., (in Russian).
[3] O.I. Orlov, E.Y.Bersenev, A.P.Berseneva, A.G. Chernikova, R.M.Baevsky. Telemedical aspects of long-term eco-medical researches”, in Global Telemedicine and eHealth Updates: Knowledge Resources, V. 3, 2010, pp. 310-314.
[4] Baevsky R., Orlov O., Berseneva A., Chernikova A. Telemedical ecology: preliminary results of longitude medical environmental research project «Mars-500». Med@Tel. Global Telemedicine and eHealth updates. Knowledge resources. Vol.5, 2012. Luxembourg, p. 478-483.
[5] Chenikova A.., Baevsky R., Funtova I. Adaptation risk in space medicine. 2012., IAC-12, ID-14827.
[6] Orlov O., Pougatcev V., Berseneva A., Chernikova A., Baevsky R., Zhirnov Y., Gribkov E., Isaeva

末武 信宏Nobuhiro Suetake

医師・医学博士(M.D. ,Ph.D.)
さかえクリニック院長
第88回日本美容外科学会会長
日本美容外科学会認定専門医
順天堂大学医学部病院管理学非常勤講師
一般社団法人 日本肺活協会理事
一般社団法人 先端医科学ウェルネスアカデミー副代表理事
一般社団法人 日本美容内科学会理事
サイエンス・アーティスト

監修者紹介