
うつ病と迷走神経刺激
うつ病やそれらに関連する症状は、普段の生活における障害や、自殺リスクの増加、合併症の誘発など、精神的にも身体的にも障害を伴います。患者の50%以上は抗うつ薬による治療によって寛解への向かいますが、最大30%の患者は薬の効果を得ることができず、寛解の可能性が低くなります。
こうした治療抵抗性が大きな患者ほど、自殺企図、身体障害、入院、医療費や社会的コストが増加する傾向にあり、大きな問題となっています。
一方、迷走神経刺激は、元々薬剤抵抗性てんかんの治療のため開発され、研究が続く中で抗うつ効果があることが判明しています。2005年には、米国内にて4種類以上の抗うつ薬治療で十分な反応が得られなかった成人の慢性または再発性うつ病の長期治療方法として認証されましたが、2007年には、治療抵抗性うつ病に対する治療において迷走神経刺激は合理的と言える証拠が不十分と判断され、保険適用が制限されました。
12か月間のランダム化偽対照試験
2024年に米国のセントルイス・ワシントン大学精神医学部に所属するチャールズ・R・ コンウェイ氏らによる、治療抵抗性うつ病に対する迷走神経刺激の実験の報告が発表されました。
実験の方法は下記の通りとなっています。
この 12 か月間の多施設二重盲検模擬対照試験には、顕著な治療抵抗性大うつ病の成人 493 名が参加し、12 か月間、実刺激または無刺激模擬 VNS にランダムに割り付けられました。主要評価項目は 3 ~ 12 か月間の反応時間の割合で、反応はモンゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度 (MADRS) のベースラインからの 50 % 以上の変化と定義されました。さらにいくつかの副次評価項目が評価されました。
この実験の結果は以下のように報告されました。
全体として、参加者の 88.4 % が試験を完了しました。MADRS 反応のパーセントでは、実 VNS と偽 VNS を区別しませんでした。しかし、現場の臨床医 、患者 、および現場外の盲検評価者による評価では、抗うつ効果は実 VNS に有意に有利であることが明らかになりました。
上記の通り、MADRSでは迷走神経刺激の効果の証明はされませんでした。また、実験期間中にうつ病の悪化した被験者、自殺者などもいましたが、これらのパーセンテージは実VNSと偽VNSの間で差はありませんでした。これらの結果は治療抵抗性うつ病の寛解の難度の高さくるものや、実験の都合上、実験期間中に治療内容の変更ができないことに対する結果の可能性があるとされています。
しかし、患者本人や臨床医などの報告や、複数の機器で反応時間で肯定的な治療効果を示したことこら、迷走神経刺激が治療抵抗性うつ病に対して安全で効果的な治療法である可能性を示しました。
全文は以下よりお読み頂けます。
https://www.brainstimjrnl.com/article/S1935-861X(24)01390-1/fulltext
