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新型コロナウイルス感染症におけるARDS 治療および神経免疫調節の理論的根拠 

新型コロナウイルス感染症における神経免疫調節の理論的根拠

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は急性肺損傷における劇症疾患であり、その死亡率は40%を超えるとも言われています。原因になりうるものとしては細菌性またはウイルス性肺炎、煙や有毒化学物質の吸入、胃内容物の誤嚥による直接的な肺損傷、または敗血症性ショック、急性膵炎、火傷、重度外傷による間接的な損傷などが考えられます。

新型コロナウイルス感染症によるARDSとサイトカインストーム

COVID-19に感染した患者は肺に炎症が発生し、炎症を起こした細胞からタンパク質の一種であるサイトカインを分泌します。サイトカインが血液中に放出されると発熱や倦怠感、頭痛、凝固異常などが起こり、サイトカインが過剰に分泌されることをサイトカインストームと呼びます。サイトカインストームは自然免疫系が病原体を排除できなかったり、肺を損傷から修復できなかったりした際に、全身免疫反応が過剰に活性化することで発生し、全身状態の悪化や血栓形成に繋がります。

これらの炎症反応を抑えるためにステロイド系を含む様々な抗炎症薬、免疫抑制剤が開発されており、デキサメタゾンはARDSにより人工呼吸器を必要とする患者を含む、COVID-19感染の危篤および重篤な症例の生存率を改善するのに有効であることが示されています。しかし、ステロイドは炎症を抑えるために免疫機能までも低下させる副作用があり、二次感染を引き起こすなどのリスクが生じる場合があります。

VNSの全身抗炎症効果

迷走神経刺激(VNS)には抗炎症効果があることがわかっており、ARDS 患者への代替免疫調節治療となり得る可能性があります。VNSには炎症誘発性サイトカインの分泌を抑える効果がある他、免疫調節機能があることもわかっており、関節リウマチ、難治性てんかん、クローン病などにおいて抗炎症作用と症状の改善が報告されています。

ただ、非選択的VNSの場合、肺へ悪影響がある可能性も捨てきれません。VNSのより肺の副交感神経遠心性線維が刺激された場合、低酸素症と炎症性傷害を増強する可能性があります。しかし、求心性A線維を刺激した場合、呼吸困難と反射的な副交感神経緊張の低下を引き起こすとされ、遠心性繊維を刺激した時とは真逆の効果をもたらします。肺迷走神経束を刺激した場合、どちらの影響が発生するかは不明であり、的確な選択的VNSを行うことが必要となります。

まとめ

ロンドン大学医学物理学および生体医工学科の論文において、以下のようにまとめられています。

VNS には、感染因子に対する特異的免疫を損なうことなく、新生反応の重要な段階で免疫活性化を抑制する能力があり、ARDS やその他の免疫調節異常疾患の治療に非常に有利です。免疫抑制療法とは対照的に、腹腔上腸間膜神経節複合体でシナプスを形成する迷走神経の腹部遠心性神経を介した CAIP の活性化は、ARDS の病態生理学的特徴である炎症誘発性サイトカインの過剰産生を減弱させるのに望ましいものです。しかし、肺線維に対する刺激の影響を考慮する必要があります。これは、気管支収縮と粘液分泌の活性化によって炎症を増強し、CAIP 活性化の有益な抗炎症効果を打ち消す可能性があるためです。迷走神経を選択的に調節することで、必要に応じて脾臓と肺の免疫経路を個別に活性化またはブロックし、ARDS の結果を改善する可能性が最も高くなります。

全文は以下よりお読み頂けます。 

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2021.667036/full

末武 信宏Nobuhiro Suetake

医師・医学博士(M.D. ,Ph.D.)
さかえクリニック院長
第88回日本美容外科学会会長
日本美容外科学会認定専門医
順天堂大学医学部病院管理学非常勤講師
一般社団法人 日本肺活協会理事
一般社団法人 先端医科学ウェルネスアカデミー副代表理事
一般社団法人 日本美容内科学会理事
サイエンス・アーティスト

監修者紹介